660年余の永い歴史を持つ党家村。明から清時代の古い街区や建築などの良好な集落空間を今に伝え、近年、中国では北方の伝統的農村集落として注目されている。党家村は、陝西省西安市から直線で北東約200kmの韓城市郊外、黄土平原が抉られた狭い溝谷平野に拓け、谷を辿ると3km程で黄河に至る。また、韓城市周辺には史家・司馬遷の廟や兎王の治水門等が残り、山椒(花椒)の大産地としても有名な所。偶然訪れた党家村は優しい眼差しで私に語りかけてきた。
そこには日頃享受する都市の持つ利便性は見当たらなかった。心の中に埋もれ忘れかけていた記憶を呼び覚まし、集落と暮らしの風景が醸し出す豊かさが身近に迫ってきた。背伸びしない等身大の風景として。―見渡す限り平坦な黄土高原・迷路のような石畳の路・煉瓦に包まれた四合院の甍の波・意匠を凝らした装飾の数々・村人達の笑顔と思いやり等々―村を構成する全てが語りかけ、私を包んでくれた。
そこが党家村だった。 |